魚類学雑誌
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南太平洋外洋生態系におけるアロツナスの役割
谷津 明彦
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1995 年 41 巻 4 号 p. 367-377

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抄録
1985-1987年に南太平洋 (20-54°S, 74-150°W) から表層流し網により得られた2257尾のアロツナス (尾叉長463-896mm) の生殖腺の状態と胃内容物を調査した.10-11月の亜熱帯域と31°S以北のペルー海流域は産卵場, 11-2月の亜南極域と38°S以南のペルー海流域は索餌場と考えられた.索餌場でアロツナスは主にオキアミ類, イカ類, カイアシ類, ハダカイワシ科の小型魚および端脚類を摂餌していた.餌料中の優占種はオキアミ類のEuphausia vallentini, E. lucens, Thysanoessa gregaria およびカイアシ類のNeocalanus tonsus であった.アカスルメイカは南東太平洋で優占したが, ニュウドウイカ属の数種は南太平洋中部で普通に見られた.端脚類ではPrimno macropaThemisto gaudichaudiiが普通に見られたが, これらの重要性は重量比では相当低かった.アロツナスの成魚はアオザメ, ヨシキリザメ, メカジキおよびクロカジキにより亜熱帯域で捕食されていた.アロツナスは高度回遊魚であり, 亜南極外洋表層域の季節的に変動するプランクトンのバイオマスに適応した種と考えられた.
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