抄録
自転車走行空間が貧弱なまま自転車保有台数を伸ばしてきた状況にあるわが国において,自転車走行空間の整備には今後どのような政策展開が必要になるのかを検討するため,わが国の近年の自転車交通政策を概観した後,米国の自転車交通政策に関わる近年の制度的な仕組みや取り組みを,連邦,州,都市圏,市の各行政の枠組みに応じて文献およびヒアリングにて調査し,その全体像を概ね把握することができた.それら行政間の関係に留意しつつ考察し,今後のわが国の自転車政策への示唆として,理念,枠組み,原則の重要性と,具体的に(1)政策継続性,(2)ネットワーク計画の重要性,(3)政策・計画・整備に至る制度の設計,(4)関係機関および市民NPO等の連携と責任分担,(5)自転車走行空間の設計理念の確立,等を結論として得ることができた.