耳鼻咽喉科免疫アレルギー
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総説
HPV関連中咽頭癌における内因性免疫APOBEC3とエストロゲン–エストロゲン受容体の予後との関係
加納 亮近藤 悟吉崎 智一
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2017 年 35 巻 4 号 p. 279-282

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抄録

近年,ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)は,中咽頭癌の発癌ウイルスとして注目されている。しかし,中咽頭癌におけるHPVによる発癌機構は不明である。子宮頸癌では,HPV遺伝子発現マウスにエストロゲンを投与することで子宮頸癌が誘導され,エストロゲン受容体(ER)の抑制により発癌が成立しないことが分かっている。また,内因性免疫因子の一つで抗ウイルス作用を持つAPOBEC3は,HPVのウイルスゲノムに変異を誘導蓄積し,子宮頸癌の発癌に関与することが報告されている。そして,APOBEC3はエストロゲン–エストロゲン受容体と関連性があることも知られ,HPVによる発癌にはHPV・エストロゲン–ER・APOBEC3の三者が関連することが示唆される。

我々は,中咽頭癌においてHPVとERの関連性を解析し,APOBEC3が関与するかを検討した。中咽頭癌の生検組織を,免疫組織化学染色,リアルタイムPCRの各手法を用い,HPVの有無によるERの発現量,ERとAPOBEC3発現量の関係,ERの有無による予後の解析を行った。HPV関連中咽頭癌組織において,HPV非関連中咽頭癌組織と比較して,有意にERの発現が増加していた。またHPV関連中咽頭癌において,ER陽性は予後良好因子であった。ER陽性中咽頭癌において,ER陰性中咽頭癌と比較して,APOBEC3Aが高発現していた。

HPV関連中咽頭癌とエストロゲン-ER経路は関連があり,ERは予後因子となる。

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© 2017 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
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