耳鼻咽喉科免疫アレルギー
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特集 『第35回学会シンポジウム: 頭頸部癌免疫療法のブレークスルー, 現状と未来』
免疫チェックポイント分子と頭頸部癌における骨髄系細胞の動向
坂倉 浩一
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キーワード: PD-L1, CD47, MDSC, 単球, マクロファージ
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2017 年 35 巻 4 号 p. 287-290

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抄録

白血球はその起源によって,リンパ球を主とするリンパ系と,顆粒球・単球・マクロファージ等を含む骨髄系に大分される。本総説では,頭頸部癌における骨髄系細胞研究の動向と免疫療法への応用を,免疫チェックポイント分子と絡めて概説する。

骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)は単球より未熟な細胞で,強力な免疫抑制作用を持つ。我々は頭頸部癌患者において,PD-L1やTGF-βを介したMDSCのT細胞機能や増殖の抑制を報告した。ビタミンによる分化や免疫チェックポイント阻害薬,分子標的薬による,MDSCの制御が近年期待されている。

末梢血中の単球はその分化度によって3つのサブセットに分けられるが,我々は近年単球サブセットが癌患者では未熟化し,HLA-GやPD-L1等の免疫抑制分子をより多く発現していることを報告している。

マクロファージは免疫刺激性のM1と抑制性のM2の亜群に分かれ,癌組織周囲の腫瘍関連マクロファージ(TAM)にはM2が多く含まれる。現在M2の産生する抑制性サイトカイン/ケモカインを阻害する臨床試験が,多数進んでいる。一方で癌細胞はマクロファージに対する“Don’t eat me”シグナルCD47を発現し,貪食から逃避する。近年我々は舌癌におけるCD47高発現は予後不良因子であり,CD47阻害により頭頸部癌細胞の貪食が促進されることを報告し,海外では臨床試験が進んでいる。

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© 2017 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
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