産業動物臨床医学雑誌
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原著
黒毛和種肥育牛の血漿 γ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)と月齢および血液成分との関連
渡辺 大作安藤 貴朗浅井 沙央理大塚 浩通高岸 聖彦大橋 修一熊田 昇二芝 文彦及川 正明
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2010 年 1 巻 4 号 p. 177-183

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抄録
黒毛和種肥育牛の飼料給与および各肥育ステージにおける血液成分の変動を調査し,肝障害の指標としての血漿γ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)値との関連を検討した.供試牛は青森県内の5農場で飼育された8~32カ月齢の黒毛和種肥育牛305頭で,肥育前期(9~13カ月齢:69頭),肥育中期(14~18カ月齢:70頭),肥育後期(19~23カ月齢:95頭)および仕上期(24カ月齢~出荷まで:71頭)の各肥育ステージに分類した.血漿ビタミンA(VA)およびβ-カロテン値は肥育前期に比べて肥育中期以降に低値を示した.血漿総コレステロール(TC)とGGT値は中期以降に,尿素窒素(UN)値は後期に高値を示した.血清銅(Cu)値は中期以降に低値を示し,血清鉄(Fe)とセレン(Se)値は後期と仕上期に高値を示し,血清亜鉛(Zn)値は変化がみられなかった.血漿GGT値と月齢,血漿UN, TCおよび血清Se値との間には有意な正の相関が,血漿GGT値と血漿VAおよびβ-カロテン値との間には有意な負の相関がみられた.血漿GGT値を目的変数とし,肝障害で変動する血清CuとZnを除いた重回帰式(R2=0.21, p<0.001)では,最も高い相対寄与率を持つ要因は月齢53%,次いで血漿VA 値25%,血漿UN値14%であった.以上の成績から,血漿GGT値の増加には月齢,血漿VAおよびUN値が強く関連していることが示唆された.
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© 2010 日本家畜臨床学会・大動物臨床研究会
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