2020 年 11 巻 3 号 p. 114-121
昨今,ジビエ産業が賑わいを見せているが,社会一般的には突如巷に現れた野生動物食ブーム,という感が強く,その背景や生産過程についてはあまりよく知られていない.元来食肉は家畜と家禽に由来するもので,相応の法的規制の下に生産されるが,現在の日本の食肉生産方法に野生動物を組み込むことは衛生面から不安が多いため,家畜とは異なる解体施設での食肉生産を義務付けられている.しかし,大自然の中で生育した野生動物が保有する微生物によるヒトへの危害性については未知の部分が多いにもかかわらず,家畜でないため,家畜に課せられる法律が適用できないことから生産された食肉の安全性に不安を持つ声も少なくない.既に産業としてのジビエ生産が確立されている米国,欧州ではそれぞれに適した衛生管理政策によって衛生管理を実現しているが,その方法は両者とも大きく異なっている.これらの先行している衛生管理政策を参照し,我が国に適したジビエの衛生管理法の構築が望まれる.