産業動物臨床医学雑誌
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総説
自給粗飼料中のマイコトキシンが牛の生産性および疾病発生に及ぼす影響とその防除
和田 賢二小形 芳美大塚 浩通小岩 政照永幡 肇
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2011 年 2 巻 2 号 p. 53-63

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抄録

マイコトキシンはカビが産生する二次代謝産物であり,生体に対してさまざまな危害をもたらす.カビが発生した自給粗飼料の給与により成績不振に陥る牛群がしばしばみられるものの,マイコトキシンとの関係については明らかにはされていない.そこで,自給粗飼料のマイコトキシン濃度と牛群の生産性および疾病発生状況,白血球機能に対するマイコトキシンの影響ならびにマイコトキシン吸着剤の飼料添加による防除効果を調査した.購入飼料および自給粗飼料(計172検体)のアフラトキシンB1(AFB1),デオキシニバレノール(DON),ゼアラレノン(ZEA)を酵素免疫測定法により測定したところ,グラスサイレージおよびデントコーンサイレージで各マイコトキシン濃度が高い傾向にあった.AFB1濃度が高い自給粗飼料を給与している酪農場では牛の淘汰率が高く,1頭当たりの年間乳量が低い傾向にあった.また,マイコトキシンの重複汚染により子牛の増体量の低下,下痢症の増加と長期化および流早産の増加が認められた.またin vitroでは,マイコトキシンはリンパ球の幼若化および好中球の化学発光反応を抑制した.自給粗飼料のマイコトキシン汚染が疑われる農場において,吸着剤を飼料添加したところ,AFB1濃度が高値であった農場では乳汁中アフラトキシンM1(AFM1)濃度の低下および免疫細胞の増加が認められ,死亡率が減少した.ZEAが高値であった農場では繁殖成績に改善がみられ,早産を伴う周産期病が減少した.以上の知見から,自給粗飼料はマイコトキシンに汚染されている危険性があり,それらの継続的な摂取は白血球機能を介して,牛の生産性および疾病発生と関係していることが示唆された.さらに,飼料への吸着剤の添加は生体に対する各種マイコトキシンの影響を低減させる効果があることが確認され,生産農場における有効な対応策のひとつであることが示された.

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© 2011 日本家畜臨床学会・大動物臨床研究会
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