4歳齢ホルスタイン種経産牛において食欲不振,頚静脈の怒張および胸垂の冷性浮腫が認められ,心音聴取が困難であったため,臨床的に創傷性心膜炎が疑われた.心臓超音波検査でも心外膜にフィブリン様構造物の付着を確認したため創傷性心膜炎と診断された後に斃死した.剖検の結果,心外膜の絨毛性増殖および心耳部の心外膜下層における白色結節が認められたが,クギなどの異物による創傷性病変は確認されなかった.牛白血病抗体が陽性で病理組織学的検索および免疫組織化学的染色結果より,本症例は心外膜における心膜中皮腫と地方病性牛白血病に起因すると思われるB細胞性リンパ腫が併発した稀な心臓腫瘍の1例と考えられた.