産業動物臨床医学雑誌
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症例報告
臨床現場で実施した超音波検査により肋骨骨折と診断したホルスタイン種子牛の1 例
後藤 聡 加治原 彩子図師 尚子渡邉 謙一都築 直古林 与志安
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2018 年 9 巻 4 号 p. 165-169

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抄録

 新生子牛における肋骨骨折の多くは分娩時に起こるとされ,死産の原因ともなる.今回,臨床現場にて呼吸不全を呈した子牛に遭遇し,X 線検査によって完全骨折が,超音波検査によってX 線検査ではわからなかった不完全骨折が診断できた.症例は,出生後より呼吸速迫し腹式呼吸で呼吸困難の様相を呈するホルスタイン種雄子牛で,呼吸異常,食欲不振を主訴として受診した.出生時,獣医師により牽引娩出されており,熱発,肺音異常,心拍および呼吸数増加を認め,胸部触診において右側前胸部の疼痛所見から肋骨骨折を疑った.臨床現場にて胸部X 線検査および超音波検査を行い,X 線検査では右第1・2 肋骨の完全骨折を認めた.超音波検査では,右第1・2 肋骨肋骨体に加えて第3 ~ 9 肋骨肋骨体において骨膜線の段差(step sign)と骨表面の無エコー領域(血腫)が描出された.畜主が廃用を決定したことから,大学に搬送してCT 検査を行った.CT 検査では,超音波検査と同様の骨折所見とともに,胸腔内に突出した肋骨遠位骨折端による気管の圧迫が観察された.死亡後の病理解剖検査では,右第1 ~ 9 肋骨の完全骨折および不完全骨折が確認された.本症例において,X 線検査にて右第1・2 肋骨の完全骨折を診断することは可能であったが,右第3 ~ 9 肋骨の不完全骨折の診断は困難であった.一方,超音波検査では,右第1・2 肋骨の完全骨折のほか,外形変化に乏しい不完全骨折であった第3 ~ 9 肋骨においても骨折診断が可能であった.

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© 2018 日本家畜臨床学会・大動物臨床研究会
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