法と心理
Online ISSN : 2424-1148
Print ISSN : 1346-8669
裁判員裁判の量刑決定要因に関する第三者の推測(<サブ特集>裁判員制度の見直しに向けて:法と心理学の視点からII)
塚本 早織菅 さやか唐沢 穣
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ジャーナル オープンアクセス

2013 年 13 巻 1 号 p. 34-45

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抄録

本研究では、裁判員裁判を評価する一般市民の視点から、量刑判断の原因となる要因の推測がどのように行われるのかを検討した。大学生を対象に、裁判員裁判に関する報道に見立てた文章を呈示し、量刑判断に至った原因(量刑決定要因)についての推論を求めた。研究1では、自由記述によって量刑決定要因を抽出した。その結果、事件の性質や裁判の仕組みが原因として推測されたのに加え、裁判員の感情や認知、社会的カテゴリーなど裁判員の特徴に着目した原因推論が行われた。研究2では、研究1で量刑判断に影響を与えると推測された要因の中でも、裁判員の性別カテゴリーの影響に着目する心理的背景と、その際の事件の種類との関係を詳しく検証した。性別などの社会的力テゴリーへの着目を行いやすい個人特性である「心理的本質主義」を測定し、量刑決定要因の推論との関連を検証した。その結果、心理的本質主義信念が強い個人は、事件の種類に関係なく、多数派の男性裁判員の意見が量刑判断に影響を与えたという推測を行いやすいことが明らかになった。本研究を通して、裁判員裁判を客観的に評価する際に着目されやすい要因と、その心理的背景が実証的に解明されたといえる。

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© 2013 法と心理学会
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