抄録
本稿では、交通事故ADR(裁判外紛争解決)システムに着目し、特にわが国のADRにおける「相談」の価値を再評価しながら、ADRがおかれた環境の変化にも依拠しつつ、「法と心理」研究の可能性について探る。交通事故ADRについては、「相談」が紛争解決プロセスの一翼を担っており、さまざまな問題をはらみつつも、一定の成果をあげてきた。次世代型ADRでは、こうした環境を発展させ、より紛争当事者の「想い」にそった紛争解決システムの充実が望まれている。たとえば、リーガルプロフェッションと紛争当事者とのコミュニケーションを通じ、「協働」により紛争解決を達成する仕組みづくりが求められる。「法と心理」研究は、さまざまな「想い」を含む「相談」フェイズの具体的、実証的な研究の分野において、特に強い貢献が期待されているのである。