日本家畜管理学会誌
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アゾラ-合鴨-稲の有機的生産システムにおける除草と駆虫効果ならびに合鴨の行動について
劉 翔高山 耕二山下 研人中西 良孝萬田 正治稲永 淳二松元 里志中釜 明紀
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キーワード: アゾラ, 合鴨, 除草, 駆虫, 行動
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1998 年 34 巻 1 号 p. 13-22

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抄録

水生シダ類植物アゾラと合鴨の有機的な結合が水田における除草と駆虫に関する効果および合鴨の行動に及ぼす影響を検討した。標準施肥区(以下、慣行区)、対照区、合鴨区、アゾラ区およびアゾラ-合鴨区の5区を設け、1996と1997年に試験を行った。水稲移植後の翌日に、1996年には70g/m^2、1997年には25g/m^2のアゾラをそれぞれの水田に接種し、約6〜7週間増殖させた。その後、合鴨によってアゾラを土中または水面下に攪拌し踏込ませた。水稲移植1週間後、1週齢のマガモ系合鴨を6羽/3aずつ水田に放し、稲の出穂期までの約2ヵ月間放飼した。1996年8月および9月においては、アゾラ-合鴨区と合鴨区の雑草発生量は対照区よりも有意に少なかった。1997年8月においては、アゾラ-合鴨区の雑草発生量は慣行区を除いた他の区に比べ、有意に少なかった。マット状になったアゾラによりヒエ類や他の水田雑草が抑制され、合鴨によりカヤツリグサなど柔らかい草が採食され、アゾラ-合鴨区の雑草発生量が少ないのはこの両者の相乗効果によるものと推察された。セジロウンカの発生は、対照区とアゾラ区に比べ、合鴨区とアゾラー合鴨区で有意に少ないことが認められた。トビイロウンカの発生は、合鴨区に比べ、アゾラ区とアゾラ-合鴨区では有意に多いことが認められた。ツマグロヨコバイについては、合鴨による顕著な防除効果か見られなかった。また、アゾラを鋤き込む時期によって、稲作後期の害虫の発生量が異なるものと思われた。合鴨の採食行動は夜間でも頻繁に行われているのに対して、アゾラー合鴨区では、昼間に集中していることが認められた。また、アゾラー合鴨区の採食行動と移動行動は、合鴨区に比べ、顕著に少なく、休息行動は、逆に顕著に多かった。日本家畜管理学会誌、34(1) : 13-22,19981998年3月26日受付1998年5月13日受理

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© 1998 日本家畜管理学会
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