日本家畜管理学会誌
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固形塩の設置が舎飼い肥育牛の給飼後における行動・生理に及ぼす影響
石渡 俊江植竹 勝治安部 直重江口 祐輔田中 智夫
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2005 年 40 巻 4 号 p. 149-154

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抄録

環境エンリッチメントレベルが異なる飼育ペンでの牛の舐塩行動の発現についで調査するため、黒毛和種×ホルスタイン種の去勢雄牛を2回の反復実験において合計71頭(n=35,36)を供試した。供試牛は導入2週間後から、濃厚飼料を給飼する給飼通路と乾草を給飼する飼槽、水槽、休息場所からなる通常のペンの対照群(C群:n=11,12)、通常のペンに乾草が入るように改良したドラム缶(Φ58価×H90cm)を設置したドラム缶群(D群:n=12.12)、そのドラム缶の側面に人工芝(30×120cm)を巻き付けた身繕いドラム缶群(GD群:n=12,12)に分け、3つのペン(各ペン6.0×9.5m)で飼育した。固形塩(5kg)は導入後4.5ヵ月目から給飼通路に設置し、その後、朝夕の給飼後2時間に10分間隔で3日間連続して行動観察し、採血と体重測定を合わせて行なった。観察期間中に舐塩行動が観察された牛は、対照群16頭、ドラム缶群10頭、身繕いドラム缶群11頭と処理群間に差はみられなかった。観察された舐塩行動の持続時間は、ほとんどが20分未満であった。舐塩行動の前に発現した主な行動は、乾草の採食(25.9%)、休息(22.4%)であり、後に発現した主な行動は休息(28.3%)、乾草の採食(21.7%)であった。舐塩回数の多い個体ほど、休息回数(r=0.25,P<0.05)と反側回数(r=0.28,P<0.05)が多くなった。また、舐塩回数の多い個体ほど、血清インスリン濃度が高くなった(r=0.41,P<0.05)。さらに一度でも舐塩行動を発現した個体で、未発現の個体より血漿グルコース濃度が低くなった(P<0.05)。以上の結果から、固形塩を舐めることは、いずれの環境エンリッチメントレベルにおいても必ず何頭かの牛で発現し、休息や反側行動の発現とインスリン分泌を促し、消化・代謝を促進する可能性があることが示唆された。

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© 2005 日本家畜管理学会
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