抄録
本症例は,初診時年齢 23歳 4か月男性で上顎左右側犬歯の低位唇側転位を伴う AngleⅡ級叢生症例と診断した.リンガルアーチは,リンガルブラケットを治療初期から装着できない叢生症例において有効であると考えられる.そこで本症例は,リンガルアーチを用いて上下顎左右側犬歯の部分的遠心移動を行った後,上下顎にリンガルブラケット(Kurz 7 th)を用いた治療を行った.リンガルアーチを併用することによって,その動的治療期間を 30か月と短縮することができたと考えられた.保定期間は 25か月を経過しているが,良好な咬合状態が維持されている.