2016 年 57 巻 2 号 p. 217-226
近年,吃音児は注意機能の脆弱性を抱えうることが示されているが,青年期以降の吃音者を対象として網羅的な注意機能の検討,および注意機能と吃症状との関連の検討を行った研究は見られない.本研究は,青年期以降の吃音者20名,非吃音者 18名を分析対象とし,青年期以降の吃音者においても注意機能の脆弱性が認められるのかどうか,吃音者群内において注意機能と吃症状はどのように関連するのかを検討することを目的として行われた.その結果,吃音群と統制群で注意機能に関して統計的に有意な差は認められなかったものの,実験課題に対する反応が速く,エラーが多いものほど吃音の重症度が高いことが示され,発話に限定されない,より広範な文脈での注意の使い方が吃音の重症度に影響を与えている可能性が示唆された.青年期以降の吃音臨床において,注意機能に対する介入方略が有用である可能性について議論した.