音声言語医学
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総説
造影剤誤嚥による急性・慢性気道組織障害の組織学的・分子生物学的機序の解明
―嚥下造影検査で安全な造影剤は何?―
上羽 瑠美佐藤 拓後藤 多嘉緒二藤 隆春
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2020 年 61 巻 1 号 p. 11-17

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抄録

嚥下造影検査は多くの施設で施行されているが,造影剤誤嚥による急性期および慢性気道組織障害の免疫組織学的・分子生物学的機序は十分解明されていない.
本学会研究助成を受け,3種類の造影剤(硫酸バリウム:Ba,イオン性ヨード系造影剤:ICA,非イオン性ヨード系造影剤:NICA)60μlの誤嚥ラットを作製し,投与2日目(急性期)と30日目(慢性期)に肺障害に関する組織学的・分子生物学的検証を行った.急性期にはBaが最も組織変化を生じ,著明な炎症細胞浸潤と炎症性サイトカイン上昇を呈した.ICAはわずかに肺鬱血所見を認めたのみで,ICAもNICAも炎症サイトカインは上昇しなかった.慢性期で組織変化を認めたのはBaのみで肉芽形成やT細胞を中心とした炎症細胞浸潤が継続していた.
本稿ではさらに,造影剤誤嚥による急性および慢性気道障害の背景にある分子機序に関して文献的報告に基づき解説する.

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© 2020 日本音声言語医学会
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