2020 年 61 巻 1 号 p. 31-40
目的:構音障害のある人を対象としてエレクトロパラトグラフィ(EPG)を用いた視覚的フィードバック訓練を実施しているが,典型的な日本語音の舌と口蓋の接触パターンに関するEPGデータは限られている.今回は最も高頻度に練習される歯茎音,歯茎硬口蓋音について目標パターンを作成することを目的とした.
方法:対象は発声発語器官や聴力に問題のない15名の日本語話者の成人である.子音[t, d, n, s, ɕ, ts, dz, tɕ, dʑ]を含む「あた」など母音・子音・母音の音節をEPGで記録し,子音産生時の最大接触フレームおよび開放フレームを抽出し累積した.また,各子音の特徴を示す量的分析を行った.
結果:子音産生時の舌と口蓋の接触状態は個々人によって差はあるが基本的な接触パターンは一致していた.15名のデータを累積することにより各音の特徴が明らかとなった.
結論:EPGを用いた評価や視覚的フィードバック訓練に役立つ日本語子音の有用なデータが得られた.