音声言語医学
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原著
小児声帯結節と成人声帯結節における臨床所見の比較
―対比を通して捉えた小児声帯結節の臨床的特徴―
白井 裕美子前川 圭子末廣 篤
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2021 年 62 巻 3 号 p. 215-222

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抄録

声帯結節における小児症例と成人症例の臨床的特徴の差異について検討するため,両者の初診時所見を比較したところ,小児は成人に比して,次の点で有意な差があった.1)叫び声を多用する.2)嗄声の自覚から初診までの期間が長い.3)喉頭内視鏡所見にて結節病変が大きい.4)聴覚心理的評価は中等度嗄声の占める割合が高い.5)音響学的指標は振幅変動指数の異常値を示す者が多い.
音声酷使は小児,成人ともに認めたが,小児では叫び声を多用し,かつ嗄声を長期間放置されるという特徴があり,結節病変,聴覚心理的評価,音響学的指標における成人との差を生じる要因の一つである可能性がある.小児声帯結節は変声期に軽快あるいは治癒する症例が多いとされるが,比較的重い嗄声を呈した状態で,音響外傷に当たる叫び声を含む音声酷使を長期間繰り返すことで,将来的に外科的治療が必要な線維性に硬化した結節病変になる可能性もあり,注意が必要であると考える.

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© 2021 日本音声言語医学会
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