痙攣性発声障害(SD)の病態として中枢神経の関与が指摘されており,脳機能画像による先行研究では患者の発声に伴う脳活動を評価し,大脳皮質・皮質下領域の異常活動が示されてきた.しかし,これらの研究では,SD患者と健常者の発声の質が異なることが脳活動の群間比較に影響を与える重大な交絡因子であり,取り除くことが困難であった.一方,音声知覚によるフィードバックが発声の調整に重要であり,音声知覚によって発声に関与する神経機構が活動することが示されてきた.そこでわれわれは,機能的MRIを用いて内転型SD患者11名と健常者11名の音声知覚に伴う神経活動を比較した.その結果,SD群は健常者群に比べ,左感覚運動野と視床が有意に賦活しており,SDの病態に深く関連することが示唆された.さらにSD群において左感覚運動野の活動値が重症度(voice handicap index-10)と正の相関を示しており,将来的に診断や治療効果予測のバイオマーカーとして応用できる可能性が示唆された.