音声言語医学
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症例
ことばの教室に通級する重度吃音児1例に対する多面的・包括的アプローチの実践
石田 修飯村 大智
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2021 年 62 巻 4 号 p. 334-343

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抄録

吃音児に対する多面的・包括的アプローチの有効性が報告されているが,その多くは病院や研究機関における実践である.吃音児の多くが通うことばの教室における症例報告は数編程度で,知見の蓄積が求められる.本報告では,ことばの教室に通級する重度吃音児1例に吃音症状面,認知・感情面,環境面に対する多面的・包括的アプローチを実施した.その結果,吃音重症度は重度から軽度に改善し,コミュニケーション態度も積極的な傾向になり,親子ともに吃音に対する不安が軽減した.本症例の経過から,ことばの教室における多面的・包括的アプローチの実施にあたり,(1)流暢性促進と流暢性形成法が吃音症状の改善に有効な可能性があること,(2)吃音の認知や行動に焦点を当てたアプローチが不安の軽減や認知の変容に寄与する可能性があること,(3)家庭と在籍校における環境調整により吃音の正しい知識を伝える必要があること,が考えられた.

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© 2021 日本音声言語医学会
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