2023 年 64 巻 2 号 p. 96-104
人工内耳装用者が,学生から社会人へとライフステージが変化する際には,その環境変化に戸惑う者は少なくない.本研究では,就労時の人工内耳装用者の支援に求められているものを明らかにするため,21名の学生と32名の就労者の人工内耳装用者を対象に質問紙調査を行った.コミュニケーション手段では,就労群は学生群と比べて音声口話のみをもちいる割合や手話よりも筆談を音声口話と併用する割合が有意に高かった.音環境は,就労群のほうが有意に常に騒音がある環境におかれている割合が多かった.このためか,就労群では職場でのコミュニケーションや人間関係,やりがいについての満足感が有意に低かった.コミュニケーション補助ツールの利用者は両群とも半分以下であったが,利用している場合の活用度は就労群でも高く,音環境の改善や難聴についての周知とともに,コミュニケーション補助ツールの認知度向上や開発を進める必要があると考えられた.