文献に記載された失語症のかなの読み書きの障害とその訓練法を, 先に提案した単語情報処理の機能的モデルに基づき検討した.その結果, かなの読み書きの障害には, 文字言語と音声言語の乖離により生じるものと, 音声言語処理系の障害により生じるかなの副次的な障害, とがあり, これらが重畳して現われることが明らかとなった.また, それらの障害に対する訓練法には, 障害された処理過程・経路を使わずに, 新たな迂回路を作り機能の回復を目指すものと, 障害された処理過程・経路をそのまま使い, 機能の復元を目指すもの, とがあった.現状では, これら2種の訓練法の有効性が十分に比較されてはおらず, さらに検討する必要があるように思われる.