抄録
知能障害のない1言語発達遅滞児の指導経過より, 音声および文字言語発達障害の特徴とその背後にあると思われる障害要因との関連性を検討した.症例: 15歳, 男.始歩1歳4ヵ月, 始語6歳.WISC CA9歳6ヵ月時, PIQ 102 VIQ54.平仮名の音一文字対応は遅れ成立したのは清音10歳10ヵ月, 濁音11歳8ヵ月.構音障害は長期化しすべての音を単音節レベルで構音できるようになったのは13歳8ヵ月.
1.本症例は言語発達経過およびその過程にみられた特徴から全体像としては, Rapinらの音韻―統語困難症候群に一致していた.
2.微細運動は円滑さに欠け, 音の探索行動や自己修正の増加を特徴とした構音障害, 統語レベルの遅れを含む表出障害がみられた.
3.読み書きの遅れの背景として語音認知の障害が推測された.