1993 年 34 巻 4 号 p. 322-329
慢性期の失語症患者90例 (失名詞失語, Broca失語, Wernicke失語各30例) , 健常者20例に対し, 語連想課題として自由連想, 統制した語連想, および選択課題の3種を施行し, 失語症患者の語連想における健常者との差異について検討した.
その結果, 失語症患者と健常者とでは語連想に差異が認められた.すなわち, (1) 自由連想において失語症患者では適切な連想語が少ない, (2) 自由連想において失語症患者では刺激語とparadigmaticな関係にある連想語の出現頻度が健常者に比べ, 著明に減少する, (3) 失語症患者では自由連想において抽象性や使用頻度という刺激語の性質により連想語のカテゴリーパターンに差異が認められる, (4) 選択課題において失語症患者のカテゴリーパターンが健常者と異なることが示された.これらの結果から, 失語症患者の語と語の結合の場の構造が健常者のそれとは異なることが示唆された.