音声言語医学
Online ISSN : 1884-3646
Print ISSN : 0030-2813
ISSN-L : 0030-2813
舌突出現象 (Tongue thrust) の症候学的検討
山本 晴美水谷 素子河村 満
著者情報
ジャーナル フリー

1994 年 35 巻 2 号 p. 167-170

詳細
抄録

舌突出現象 (Tongue thrust) は口腔顔面の失行や運動麻痺がないにもかかわらず, 発話時にのみ不随意な舌の突出を特徴とする特異な運動障害である.症状は発話時以外にはみられず, 口・舌ジスキネジア (oro-lingual dyskinesia) とは区別される.舌突出現象の報告は少なく, 本邦では矢野ら (1979) により3例が報告されているのみであり, 彼らは舌突出現象の機序を機能性のものとしている.
われわれは舌突出現象を呈した2症例を経験し, その舌の異常運動の態度について症候学的に検討した.舌の異常運動には突出以外に挙上・移動が共通して認められた.また, 舌突出現象の出現しやすい状態を構音別に調べた結果, 2症例に共通して, 歯音, 歯茎音で出現しやすいことが明らかになった.以上を含め, 舌突出現象が単に機能的障害と決めつけられない可能性を示した.

著者関連情報
© 日本音声言語医学会
次の記事
feedback
Top