音声言語医学
Online ISSN : 1884-3646
Print ISSN : 0030-2813
ISSN-L : 0030-2813
医師の立場からみた小児人工内耳
高橋 晴雄内藤 泰本圧 巖
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 37 巻 3 号 p. 367-371

詳細
抄録

小児人工内耳の手術年齢を, 語音認知のための中枢神経機構の可塑性, 側頭骨の発育, 中耳炎のリスク, の面から検討した.まずポジトロン断層検査でみると, 言語習得前失聴の人工内耳装用者では, 言語を聞いても言語を理解する聴覚連合野はほとんど活動がみられず, これは成人のみでなく8, 10歳の小児でも同様であった.したがって8歳ではすでに中枢の語音認知の可塑性はかなり低下していることがわかった.側頭骨の発育では, 蝸牛は生下時すでに成人とほぼ同じサイズに発育していること, また側頭部皮質骨の厚さは人工内耳の埋め込み部分の厚さになるのは平均では6歳だが, かなり個人差があり, 症例ごとに検討する必要があることがわかった.中耳炎の自然発生頻度は1歳をピークに減少して4歳にはかなり低下することがわかった.以上より, 小児人工内耳の手術は3~4歳から2~3年のうちに行うのが望ましいと考えられた.

著者関連情報
© 日本音声言語医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top