音声言語医学
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一発語失行症例の訓練経過
遠藤 教子鶴田 薫
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1997 年 38 巻 3 号 p. 257-266

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抄録

重度の発語失行主体型失語症例に対し, 約8年間, 系統的な構音訓練を実施した結果を報告し, 併せて訓練法について考察した.症例は, 70歳 (初診時) の男性で重度の発語失行症および軽度の失語症を有した.安定して構音可能な音はみられなかったため, ほぼ全音にわたり, 音の産生のレベルから構音訓練を実施したところ効果がみられ, 文の音読や情景画の叙述課題では著明な改善がみられた.しかし, 会話明瞭度は, 初診時の5に比し改善はみられたものの, 訓練後も3~4にとどまった.訓練は, 統合刺激法にて実施した.本方法は, 意図的に産生できる音がほとんどない重度の発語失行を有する本症例に対し, 音の産生の面で有効であったが, 会話への般化には限界があった.また, プロソディーについては訓練を行わなかったところ, 自然な改善は認められず, むしろ, 正確に構音しようとするための代償と考えられる発話速度の低下が生じた.

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© 日本音声言語医学会
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