音声言語医学
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発話において語頭モーラの脱落を認めた非流暢型失語の1例
祖父江 由佳春原 則子宇野 彰
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2002 年 43 巻 4 号 p. 396-401

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抄録

発話において語頭モーラの脱落を認めた非流暢型失語の1例を報告した.脱落は呼称, 音読, 復唱のいずれの発話様式でも認められ, 発話全体に共通の機序で生じていると考えられた.本例は発語失行を認めた.一般的には発語失行例では, 語頭モーラではなく語頭子音の脱落を認める.本例は語頭モーラが脱落した際, 脱落したモーラの部分での構音器官の動きをまったく認めなかった.語頭モーラの脱落は無意味語の復唱でも出現していたことから, 意味の有無は発現に関与していないと思われた.さらに語頭モーラが脱落した場合でもモーラ数の同定は可能であったこと, 語頭モーラが脱落した単語での語頭子音の誤りが少なかったことなどから, 本症例にとっては語頭モーラの存在が何らかの形で認知されていた可能性が考えられた.

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