2002 年 43 巻 4 号 p. 473-478
嚥下障害に対する手術には, 喉頭機能を保存する手術と犠牲にする手術がある.喉頭の重要な働きである下気道の保護作用が機能せず, 誤嚥性肺炎を防止できない場合には, 発声機能や呼吸機能を犠牲にした手術が必要である.当科において喉頭機能を犠牲にした症例では, 誤嚥性肺炎を反復し, 痰の吸引のため気管切開が行われていた例が多かった.また, 意識障害や発声障害, 構音障害, 進行性の疾患が多かった.一方, このような症例でも, 気管切開とボタン型のカニューレの使用により, 痰の吸引と発声を可能にして, 胃瘻による栄養を行いながら, 短期的ではあるが楽しみ程度の摂食ができた症例を報告し, 患者および家族のニーズを考慮する必要性を強調した.