音声言語医学
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音声から話者の心を理解する能力の発達
野口 由貴小澤 由嗣山崎 和子今泉 敏
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2004 年 45 巻 4 号 p. 269-275

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抄録

対人コミュニケーションに問題をもつ児の早期発見に役立つ検査手法を開発するため, 小学生, 中学生, 成人, 計339名 (男性173名, 女性166名) を対象に, 話し言葉から相手の心を理解する能力を調べた.言語属性として辞書的意味が肯定的な短文と否定的な短文を, 感情属性として肯定的な感情と否定的な感情をもって, 女性1名が話した短文音声を刺激として, 言語課題では言語属性を, 感情課題では感情属性を判断した.その結果, 言語属性と感情属性とが一致しない皮肉音声やからかい音声に対して, 話者の発話意図つまり心を理解する能力が小学生から中学生にかけて上昇し発達するものの, 中学生になってもなお成人の能力には達しないことがわかった.この結果は, 言語属性と感情属性とを適正に分離・統合して話者の発話意図を理解する能力が, 誤信念課題などによる心の理論テストで予測される能力よりも遅く成熟するものであることを示唆する.

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© 日本音声言語医学会
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