音声言語医学
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障害者権利条約における教育条項
―インクルーシブ教育について考える―
山中 冴子
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2008 年 49 巻 2 号 p. 126-131

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抄録

2006年12月に採択された「障害者権利条約」の教育条項は, 誰をも排除しないインクルーシブな社会の形成に向けて, インクルーシブ教育を原則とした.インクルーシブ教育は, 子どもの姿から教育を構築するという理念であり, 不断の改革プロセスである.インクルーシブな社会の形成が意図されているとはいえ, 全面的な発達を目指す教育の目的に沿って, 個の教育的ニーズの尊重が最優先されねばならない.したがって, インクルーシブ教育が真にインクルーシブなものになっているかどうかは, そこでの教育が子どもの教育的ニーズに照らして適切なものになっているかどうかという実質的側面から問われる必要がある.従来の教育実践で蓄積されてきた子どもを主人公とするための子ども観や発達観を, 「合理的配慮」を生かした教育条件整備を通して励ますことは, インクルーシブ教育と矛盾するものではなく, むしろ子ども中心の教育を保障するための基礎となる.

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