抄録
今回我々は,歯科治療時に狭心症の胸痛発作を発症し,対応に苦慮した症例を経験した.患者は82歳男性.冠攣縮性狭心症,陳旧性心筋梗塞,発作性心房細動があり,内服加療中である.患者が胸痛を訴えているとの緊急応援要請あった.患者は硝酸薬を内服したところで,意識清明,血圧80/45mmHg,脈拍数47bpm,経皮的動脈血酸素飽和度98%であった.胸痛,呼吸浅速,顔面蒼白を認めたため,モニタリングと酸素投与を開始した.徐々に胸痛は軽減し気分不快も改善したが,循環抑制が著明であったため,循環器内科に救急搬送した.搬送時には諸症状が消失したが,その1週間後に入院下で心臓カテーテル検査を施行した.その後,本人が管理していた内服薬は用法・用量が遵守されていないことが判明した.高齢の患者は,必ずしも指示された通りに服薬しているとは限らない.術者ならびにスタッフは実際の服薬内容を確認し,その情報を共有する必要性があることを再認識した症例であった.