抄録
顎関節脱臼の誘因には精神障害や脳血管障害, パーキンソン病があるといわれている. われわれは脳梗塞患者の習慣性顎関節脱臼に対して外科的治療を行ったので報告する. 患者は73歳, 女性で閉口不能を主訴に東邦病院歯科口腔外科を受診した. 両側顎関節前方脱臼の臨床診断にてHippocrates法による整復を行った. その後も脱臼をくり返したためチンキャップにより再脱臼防止を図ったが, 効果はなかった. そのためLeclerc法に準じた両側顎関節前方障害形成術を施行した. 術後約9か月を経過したが再発の徴候はない.