抄録
今回われわれは心筋梗塞発症による冠動脈インターベンション (以下PCI) 施行後, 約1か月と3か月の患者に対し全身管理法としてモニター監視下にミダゾラム使用静脈内鎮静法を併用し抜歯術を施行した.
心筋梗塞発症後の歯科治療開始時期については発症から6か月以内を観血的処置禁忌もしくは対症療法にとどめることが一般臨床では定説となっている. 今回経験した2例では, 循環器科対診の結果, PCI施行後の心機能状態が安定していたことに加え, 心筋梗塞発症後6か月まで処置を先送りすることで, 患者の日常生活に支障をきたす恐れがあったため処置に臨んだ. PCIは, 局所麻酔下での処置が可能であり手術侵襲が比較的少ないという利点を有しており早期回復が期待できる. さらにステントを用いることで再梗塞率が減少するといわれている.
今回の2例では術中, 術後に心機能の悪化や止血困難, 後出血などは認められず, 満足な結果を得ることができた.
今後, さらに増加するであろう梗塞系疾患に対する診療計画は, 内科主治医への対診, 患者のQOLの向上と全身状態を勘案して立案することが肝要である.