生理痛に対し頻回の使用経験のあるジクロフェナク (ボルタレン
®) を抜歯後鎮痛の目的で使用し, アレルギー反応を経験した. 患者は30歳女性, 身長156cm, 体重45kg. 既往歴・家族歴に特記事項はない. 現病歴は1年7か月前, 右下智歯周囲炎のため来所. セフロキシムアキセチル (オラセフ
®), ロキソプロフェン (ロキソニン
®) 投与, その後は問題なく経過していた. 患者の希望で抜歯を計画, 表面麻酔後8万倍エピネフリン含有2%歯科用リドカイン2.7ml浸潤麻酔下で抜歯. 処置時間10分程度の単純抜歯であった. 50分後オラセフ
®250mgおよびボルタレン
®50mgを内服, その45分後に悪寒を認め再来. 嘔吐, 顔面蒼白, 意識障害および脈拍触知不能, さらに激しい腹痛を訴え水様便を排泄した. 急速輸液を行うとともに, コハク酸ヒドロコルチゾン (ソル・コーテフ
®) 500mg, 臭化ブチルスコポラミン (ブスコパン
®) 20mg静注. 約25分で回復し, 血圧112/82mmHg, 脈拍数64回/分, SpO
2100%および腋窩温は37.2℃であった. 皮膚症状および呼吸困難感は認められなかった. リンパ球幼若化試験でボルタレン
®は陽性を示した.
アレルギー体質やアレルギーの既往歴, さらに薬物服用経験を問診によって聴取し, アレルギー反応やショックを回避するよう心がけなければならない. しかし, 本症例のように患者が自己管理で服用している鎮痛剤により, アレルギー反応を呈したため回避することはできなかった.
アレルギー反応の予防のみならず, 発症時の適切な対処の習得も重要である.
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