抄録
ベンゾジアゼピン (BZ) 系薬剤の常用者に対する静脈内鎮静法施行時には, 耐性の問題から使用薬剤や投与量の決定に苦慮することがある. 今回著者らは, 日本歯科大学新潟歯学部附属病院で施行された静脈内鎮静法症例のうちBZ系薬剤内服中の8例について, 比較検討を行った.
その結果, 通常量のミダゾラムで至適鎮静を得られた症例と, 投与量の増量または他剤への変更を必要とした症例で, 内服薬の種類や量などに明らかな傾向は認められなかった. さらにBZ系薬剤は臨床効果の個人差が大きいことを考慮すると, 内服薬から耐性を推測することは困難であると考えられた. 以上から, 使用薬剤や投与量の決定は, 臨床症状に応じた症例ごとの検討の必要性を再認識した.
BZ系薬剤が奏功しなかった場合のそれに代わる薬剤にはプロポフォールがある. 本剤の作用機序には特異的な受容体が存在せず, NMDA受容体が関与するとの報告もあることから, BZ系薬剤に耐性を示す症例にも適するものと考えられる.