抄録
今回われわれは, 抗凝固薬を内服している患者の上顎洞根治術, 下顎骨腐骨除去術および下顎骨骨折観血的整復固定術の周術期抗凝固療法を, PT, APHTTを指標にワーファリンカリウム (ワーファリン) からヘパリンナトリウム (ヘパリン®) に変更して管理した3例について報告する. 当科では以下のようなプロトコールでワーファリン®からヘパリン®への変更を行っている. 手術3~4日前にワーファリン®の内服を中止し, ヘパリン®2,000~3,000単位静注後, 10,000~15,000単位/day持続静注し, APTTが対象の1.5~2.5倍になるように調整する. 手術当日, 執刀3~4時間前に中止し手術を行い, 術後, 止血確認ができたらヘパリン®の投与を開始し, PT-INRが1.5~2.5倍になったら中止し, ワーファリン®は経口摂取可能になったら開始する. ヘパリン®は患者により感受性が異なり, 投与による異常出血や血小板減少症が知られているが, そのような合併症や血栓症の合併も認めず良好に経過し, 周術期にワーファリン®からヘパリン®に変更し施術を行えば安全であると考えられた.