静脈内鎮静法には多くの有用性がある一方, その周術期の管理においては, 副作用や偶発症の発症も考慮に入れておく必要がある. そこで, 当科で管理を行った静脈内鎮静法症例を対象に, 副作用や偶発症の発症をみた症例について検討を行ったので報告する.
1997年3月より2004年5月までに当科において静脈内鎮静法で管理した症例は1,938例であった. そのうち, ミダゾラムを用いた症例が804例 (以下M群), プロポフォールを用いた症例が1,134例 (以下P群) であった. これらのうち麻酔記録, 診療記録をもとに周術期に何らかの副作用や偶発症を認めた症例を研究対象とし, 両群間での副作用や偶発症の内容, 発症率について比較検討した.
各群での副作用や偶発症の症例数は以下の通りであった. 30%以上の血圧上昇はM群22例, P群18例. 30%以上の血圧下降はM群19例, P群115例. 30%以上の脈拍数上昇はM群26例, P群75例. 30%以上の脈拍数下降はM群5例, P群16例. 不整脈はM群8例, P群2例. 呼吸抑制はM群23例, P群49例. 93%以下のSpO
2低下はM群30例, P群32例. 嘔気・嘔吐はM群12例, P群4例. 気分不快はM群2例, P群1例. アレルギー様の反応はM群4例, P群2例. 迷走神経反射または疼痛性ショックはM群2例, P群3例. シバリング・振戦はM群1例, P群2例. 過換気症状はM群1例, P群1例. むせはM群0, P群9例. 血管痛はM群0, P群217例. 術後狭心症はM群0, P群1例などであった.
P群では, M群に比較して比較的深い鎮静が得られ, 嘔気や嘔吐の頻度が減少する一方, 血圧低下, 脈拍数上昇, 血管痛, 呼吸抑制やむせの発現頻度が多く, これらに対する配慮が必要と思われた.
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