抄録
ワルファリンカリウムによる抗凝固療法中の患者において, 抜歯前の服薬調整は血栓形成のリスクを高めるといわれている. そこで, 服薬調整を行った患者の抜歯前後のPT-INR (prothrombin time international normalized ratio) の変化を後ろ向きに観察することで, 血栓形成のリスクの高まる期間や服薬調整の必要性の有無について検討した.
対象は1996年1月1日より2004年12月31日までの9年間に当科で抜歯を行ったワルファリンカリウム服用中の症例83例 (継続: 25例, 減量: 11例, 減量から休薬: 4例, 休薬: 35例, ヘパリン変更: 8例) である.
その結果, 服薬継続群以外の服薬調整を行った4群は, 平均7.5日間血栓形成のリスクが高まることが示唆された. また, 継続群において, 抜歯後止血困難な症例はなかったことより, 普通抜歯の場合PT-INRが3.0以下であれば, 維持量継続下での抜歯は可能と考えられた.