抄録
口腔外科手術時の静脈内鎮静法導入時に発作性心房細動を呈した症例を経験したので, 循環器疾患に対する静脈内鎮静法の適応に関する考察を加えて報告する.
症例は64歳, 男性. 既往歴にて高血圧症・糖尿病があった. 右側術後性上顎嚢胞の診断のもと, 嚢胞摘出術および対孔造設術を計画した. 手術前検査では, 高血圧症以外の循環器障害を認めなかった. ペンタゾシンおよびジアゼパムを静脈内投与し, 上顎神経ブロックを施行したころより心房細動を認めた. 薬物による除細動を試みるも効果なく, 電気的除細動を施行し洞調律に回復した. 高血圧症や精神的ストレスが心房細動の原因と考えられた.