抄録
今回われわれは, 習慣性顎関節脱臼に対し関節結節切除術を施行した症例を経験したのでその概要を報告する. 症例は56歳女性で脳腫瘍治療後に認知障害が生じ, 両側習慣性顎関節脱臼をきたした患者である. 術前の3D-CTでは両側の下顎頭は関節結節の前方に位置していたが骨変化などは認めなかった. 治療法として全身状態を考慮し上関節腔に自己血注入量法を行ったが奏功しなかったため, 全身麻酔下に関節結節切除術を施行した. 術中に開頭生検時の術野に含まれていた片側の側頭筋に著明な萎縮を認めた. 現在術後6か月経過しているが, 再脱臼は認められず良好に経過している.
顎関節脱臼の治療法の選択に際しては, 患者の社会的背景, 病因, 病態など十分な診査が重要であると思われた.