有病者歯科医療
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腎透析患者に汎発した顎骨骨髄炎例の検討
小笠原 健文白川 正順坂井 陳作岩本 正生野村 健宮原 康郎
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1993 年 2 巻 1 号 p. 47-52

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抄録
近年薬剤の進歩, 口腔衛生の向上により口腔外科領域における重篤な感染症や顎骨骨髄炎は減少している。しかし, 慢性顎骨骨髄炎は, 抗菌剤が発達, 普及した現在でもしばしば遭遇する疾患の一つである。
今回筆者らは長期透析療法患者の上下顎に広範囲に生じた難治性顎骨骨髄炎性であるためでその概要を報告する。
一般に透析患者は, 低栄養, 免疫能低下により易感染性となり口腔感染症でも重篤な症状を惹起することが多い。自験例は, 49歳女性で上下顎の広範囲におよぶ歯肉膿瘍, 右側頬部膿瘍を併発し, その後頬部痩孔を継発した。齲歯も少なく, 歯槽骨に病巣が限局していたこと, 口腔衛生状態も極めて不良なことから, 歯周感染が最も疑えた。
治療方針としては, X線学的に腐骨形成は広範囲であるものの浅在的, 境界明瞭であったことから, 短時間の手術も可能と考え, 局麻下による腐骨除去術を施行した。その結果術後何の全身的トラブルもなく創部治癒も順調に経過し, 痩孔の縮小をみた。
現在, 補綴処置も終了し, 日常生活は何ら支障なく楽しい食生活が営まれている。
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