有病者歯科医療
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口蓋形成術後の入院管理に苦慮した抗利尿ホルモン分泌異常症候群の1例
飯田 啓介金子 道生加藤 雅民吉田 憲司深谷 昌彦
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1997 年 6 巻 1 号 p. 16-20

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抄録
今回著者らは, 口蓋形成術後の管理に苦慮した抗利尿ホルモン分泌異常症候群 (以下SIADHと略) の1例を経験したので, その概要を報告した。
患者は, 3歳7か月の女児で, 現病歴として生後1か月時に口唇口蓋裂のため当科を受診し, 生後9か月時に口唇形成術を施行, 周術期に異常所見は認めなかった。しかし, 1歳6か月時に肺炎を契機にSIADHであることが判明した。
3歳7か月時, 全身麻酔下にて口蓋形成術を施行した。術翌日, 嘔吐および筋緊張の低下が認められた。検査所見では血清Na値が121.4mEq/lに低下し, 尿浸透圧は525mOsm/kgH2O, 尿中Na値は122.0mEq/lを示し, SIADHの症状が出現した。ただちに水分摂取制限を開始するとともに, 電解質補正を行ったところ, 術後3日目には血清Na値は正常範囲に回復したため, 電解質補正を中止した。しかし, 血清Na値が再び低下傾向を示したため, 術後6日目よりNaClの経口投与を行ったところ, 臨床症状は改善され, 軽快退院した。
術後4年5か月現在, 症状の再発もなく経過良好である。
種々検討した結果, 自験例におけるSIADHの症状発現は, 手術による侵襲やサードスペースからの水分の血管内への移行が関与したと考えられた。
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© 日本有病者歯科医療学会
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