抄録
一般に感染症対策として特定の病原微生物に対して抗菌性をもつ薬剤を開発する際には, その標的となる分子が菌の増殖にとって必須であるか否かが一つの重要な点となる. われわれはこの観点から, 抗真菌剤の標的候補としての必須遺伝子に着目している. ここでは, 通常一倍体として増殖するCandida glabrata の温度感受性変異株を用いた必須遺伝子群の探索に関する研究の一端を紹介するとともに, カンジダ属酵母のなかで最も病原性が強いとされるC. albicans より分離したリン酸代謝制御系 (PHOシステム) における負の制御因子として知られるPHO85 の必須性に関する研究についても言及する.