日本医真菌学会雑誌
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原著
カンジダ性毛瘡の1例
北見 由季香川 三郎飯島 正文
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2008 年 49 巻 2 号 p. 81-86

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抄録

72歳男性の上口唇に生じたカンジダ性毛瘡の1例を経験した.既往歴はうつ病,解離性障害があり内服加療中である.初診の約4年前より口内炎の出没を繰り返し,近医外科でステロイド軟膏の外用療法を受けていた.また他院で上口唇部のひりひり感に対しステロイド軟膏や抗生剤軟膏を処方され漫然と外用していた.3週間前に近医皮膚科で舌カンジダ症に対しイトラコナゾール100 mg/日の内服を行うも軽快しないために口腔内症状を主訴に当科を紹介受診した.初診時,舌背と下口唇粘膜に白苔を認め,直接鏡検で仮性菌糸がみられたため口腔カンジダ症と診断した.この時点で上口唇に皮疹はみられなかった.アムホテリシンBシロップによる含嗽を開始して4週間後の再診時,上口唇全体に前医で処方された軟膏が塗布され,発赤と腫脹を認めた.病変部は黄色痂皮が付着し膿疱も混在していた.人中部の髭は粗であるが易脱毛性はなかった.膿疱と痂皮の直接鏡検では仮性菌糸を認めたが,明らかな毛に対する寄生はなかった.生検組織は真皮上層から下層に及ぶ非特異性慢性炎症像を呈し,PAS,Grocott染色で角層内に菌糸を認めた.痂皮と生検組織の真菌培養ではCandida albicansC. parapsilosisを分離し,口腔内の白苔からはC. albicansのみを分離した.治療はイトラコナゾールのパルス療法を2クール施行し,口腔カンジダ症にはミコナゾールゲル剤を用い,ともに軽快した.

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© 2008 日本医真菌学会
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