真菌と真菌症
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2. 免疫学的諸問題
(2) 酵母の血清学
深沢 義村
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1987 年 28 巻 1 号 p. 55-63

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抄録

最近10年間の主として,わが国における医学上重要な酵母に関する血清学的研究の進歩を概説した.Candidaの血清学的同定法に関しては7種のCandidaの抗原式が整理され,10種の因子血清によるCandidaの同定法が実用化された.Cr. neoformansに関しては5つの血清型の抗原式が示され,因子血清による同定法が実用化されつつある.酵母細胞壁マンナンの免疫化学的研究に関してはS. cerevisiae, C. pseudotropicalis, C. krusei, C.albicans AとB型,C. parapsilosisなどの抗原決定基の分子モデルが提案された.その結果,酵母の血清学的特異性がマンナン側鎖のオリゴ糖の長さとα 1-2およびα 1-3結合の存在様式によって決定されることが明らかにされた.一方表層マンナンにはアルカリに不安定なβ 1-2結合の側鎖群も存在し,強い沈降反応性を示すことが見出された.Cr. neoformans A-D型の抗原側鎖の分子モデルも提案され,A,A-DおよびD型の特異性が単糖側鎖(キシロース,グルクロン酸)の配列パターンと相関することが示された.最近C. albicans A型の特異抗原に対するモノクローナル抗体(MAb)と,C. albicans AおよびB型の共通抗原に対するMAbが作製された.これらのMAbは未吸収で因子血清として1:1280以上の凝集価を示し,実用化が期待される.クリプトコックス症の血清学的診断法に関しては,プロナーゼ処理血清(髄液)のLAによる抗原検出法がルチン化されつつある.カンジダ症においては市販抗原を用いるCIEとIHAによる抗体検出法がおよそ50%の陽性率を示すことが示された.夏型過敏性肺臓炎のアレルゲンについては論議が多かったが最近Cr. neoformansと共通抗原をもつTrickosporon cutaneumであることがほぼ明らかになった.

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