真菌と真菌症
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最新号
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  • 発地 雅夫
    1989 年 30 巻 4 号 p. 233
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
  • 藤田 繁, 兼子 泰行, 佐藤 良夫, 松山 東平
    1989 年 30 巻 4 号 p. 234-240
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    ヒトの足白癬に良く似た実験的モルモット足白癬をモデルとして病変形成に影響を与える菌側, 宿主側の要因について検討した.
    実験的モルモット足白癬で炎症性組織反応をおこす T. mentagrophytes 好獣株SM-110は角層全層顆粒層直上まで侵入し, 感染菌量も多く, 接種24時間後にはすでに角層内に感染菌が認められた. 炎症性組織反応をおこさない T. mentagrophytes 好人株NTM-105は角層の上2/3までしか侵入せず, 感染菌量は比較的少なく, 3日後に接種部位の一部に少量の感染菌が認められた. T. mentagrophytes 好獣株SM-110, VUT-85001, VUT-85002, VUT-85003は, 好人株NTM-105, SM-8500に比べて毛髪穿孔テストにおいて穿孔率が高く, より大型で明瞭な穿孔を形成する. また, ウシ血清アルブミン分解能も好獣株の方が高い. 以上より, 足白癬の病変形成に菌の角層への侵入力が重要で, それには菌の蛋白分解活性が働いていることが示唆された.
    実験的足白癬の病変形成におよぼす宿主側の要因として, 細胞性免疫に注目し皮内反応とリンパ球幼若化反応を比較してみたが, いずれもSM-110株接種群で反応が強い傾向があり, 足白癬の病変形成に細胞性免疫反応が関与していることが示唆された.
  • 小川 秀興, 吉池 高志, 坪井 良治, 真田 妙子, 雷 鵬程, 阿部 由紀
    1989 年 30 巻 4 号 p. 241-246
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    真菌感染の発症因子とそのメカニズムについては, 菌側, 宿主側と多角的に研究されてきたが, 依然として不明な点が少なくない. 従来より病原性真菌の病原性を規定する要因として, 形態の変化, 毒素, 酵素など多彩なものの存在が知られている. 最近, これら酵素系の中でも特に真菌が菌体外に産生・放出するタンパク分解酵素プロテアーゼが, これら病原性に深く関与しているとの報告があいついでなされている.
    本稿では, その全てに論及する時間 (紙面) がないので, 最近我々が解明しつつある Sporothrix schenckii (S. schenckii) が産生する protease について, その性状と病原性との関連について報告した.
    (1) S. schenckii をアルブミン, コラーゲン, エラスチン, ケラチン等, そのいずれかを添加した培地中で培養すると, これらを分解するようなプロテアーゼを産生する. (2) サブロー培地中ではかかるプロテアーゼの産生は認められない. (3) 分離・精製されるプロテアーゼは2種類で, 就中プロテアーゼIは分子量36,500, 至適pH6.0, キモスタチンにより阻害されるセリン系プロテアーゼで, 一方プロテアーゼIIは分子量39,000, 至適pH3.5のカルボキシルプロテアーゼで, その活性はペプスタチンにより特異的に阻害される. (4) S. schenckii をアルブミン又はコラーゲン添加液体培地中で培養する際, 予めペプスタチン及びキモスタチンを添加しておくと, プロテアーゼI・II共に産生されず, 菌も発育しない. (5) ペプスタチンあるいはキモスタチンのいずれか一方だけの添加では菌の発育は抑制されない. (6) S. schenckii を感染させた実験動物系では, 肉芽腫形成はプロテアーゼI及びIIに対するインヒビターを局所投与することにより抑制される. 以上より, S. schenckii が人体を侵襲する場合, これらプロテアーゼは協力, 補充しつつ, その1要因として働いていることが強く予測された.
  • 加賀谷 けい子, 渡辺 浩二, 山田 俊彦, 深沢 義村
    1989 年 30 巻 4 号 p. 247-253
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    実験カンジダ症とクリプトコックス症における細胞性免疫の成立と組織反応について検討した. Candida albicans の生菌で免疫し遅延型過敏症反応陽性を示すマウスは感染後の腎病変において対照の正常マウスと比較して質的な差はみられなかったが, 免疫マウスでは皮質糸球体領域に限局した病変が多くみられるのに対して, 対照マウスでは腎盂, 細尿管部位に拡大した病変が多くみられた. Cryptococcus neoformans 感染において免疫マウスは対照マウスでは嚢胞性病変が形成される臓器においても肉芽腫性病変の形成が著明であった. 一方, γ-インターフェロン (IFN-γ) 投与マウスにおいては, 対照マウスに比べて C. albicans 感染後の腎臓内菌数の増加の抑制はみられたが菌の定着部位の差はみられなかった. また, IFN-γ投与マウスにおいては Cr. neoformans 感染後の臓器内菌数は減少したが組織反応には対照マウスとの間に差はみられなかった. したがって細胞性免疫成立マウスの C. albicans および Cr. neoformans 感染後の病変形成にはマクロファージ活性化因子 (MAF/IFN-γ) の他にリンパ球由来の走化性因子も関与すると考えられる. 一方, Cr. neoformans 細胞壁は in vitro で補体別経路を活性化するが, その菌体処理新鮮血清の走化性因子 (C5a) 活性は弱く, 本菌の in vivo における抗炎症性が示唆された. その機序はC5aが莢膜多糖により吸収されることによると考えられる.
  • 阿部 章彦, 加藤 匡志, 稲葉 鋭
    1989 年 30 巻 4 号 p. 254-259
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    鉄と真菌の相互作用について著者らが行ってきた実験結果をもとに深在性真菌症の組織応答の面から検討した.
    1) 鉄過剰状態による易感染性: 鉄過剰状態後のICRマウスに Candida albicans を接種すると, 早期に腎膿瘍が形成され, 仮性菌糸が認められたが, 対照群ではその時点で膿瘍内に真菌要素はみられなかった. すなわち, 鉄過剰は真菌症の組織学的所見には本質的な差異をもたらさなかったが, 真菌要素の発育促進に大きな影響を与えていた. 白血病マウスを用いた実験でも同様の結果であった.
    2) 血清鉄低下による感染抵抗性: Lipopolysaccharide あるいは muramyl dipeptide を前処置して血清鉄を低下させた後, アスペルギルスを接種すると, その発育速度の低下がみられ, 真菌病変の形成に時相のずれをきたした.
    3) UIBC (不飽和鉄結合能) の低下による易感染性: 糖尿病性ケトアシドーシスによるUIBCの低下は, Rhizopus oryzae の発育を促進した.
    4) トランスフェリン量低下による易感染性: D (+) galactosamine 肝障害は, トランスフェリン量を低下させ, カンジダの発育を促進した.
    以上の鉄代謝の変化による深在性真菌症の組織応答は, それぞれの対照群と比べ, 本質的な差異はなかったが, 鉄代謝の変化は真菌の発育の速さと病変の広がりに影響を与えていた.
  • 宮治 誠
    1989 年 30 巻 4 号 p. 260-265
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Coccidioides immitis は coccidioidomycosis の原因菌で, 真菌の中でも最も病原性の強い真菌として知られている.
    本症は米国西南部 (カリフォルニア, アリゾナ, テキサス, ネバダ, ニューメキシコ, ユタの各州) の半砂漠地帯, メキシコ, アルゼンチンをはじめとする中南米諸国に発生する, 南北アメリカ大陸に限局した風土病である.
    C. immitis は土壤中に生棲し, 乾期になると菌糸 hypha は分節型分生子 arthroconidium に変り, 風や土木工事 (興味あることに農地になると C. immitis は生棲できない) などで空中に舞い上がる. 患者は通常この舞い上った arthroconidium を吸引し, 肺に初発病巣を起こす. 肺組織内で arthroconidium は腫大し, 球状体 spherule を形成, その成長と共に spherule 内に多数の内生胞子 endospore (8,000~25,000個位) を産生し, 感染組織内にこれら endospore を放出する. 以後これら endospore は腫大し, spherule となり同じサイクルを繰り返す.
    現在まで多くの C. immitis の感染実験が報告されているが, 興味あることは実験動物 (主にマウス) に対する接種菌数が他の微生物の感染実験に比べ, 極めて少数の菌数で感染が成立することである. 通常100イロンマ内の菌数でマウスに感染が成立し, 全身感染へと進んでいくのである.
    この論文ではマウス体内で arthroconidium が spherule に変り, endospore を放出する寄生環 parasitic cycle の各発育段階に対して生体はどのような組織反応を示すかについて述べ, 何故小数の接種菌数でマウスに全身感染を発症し得るか, について検討した.
  • 俵 修一, 松本 哲, 渡辺 裕二, 広瀬 俊治, 松本 佳巳, 中本 昭治, 上村 利明, 山口 英世
    1989 年 30 巻 4 号 p. 266-272
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Pyrrolnitrin (PY) と clotrimazole (CTZ) の1:2 (0.6%) 配合液剤であるFK-936のモルモット実験白癬に対する治療効果を検討し, 次の結果を得た.
    1. Trichophyton mentagrophytes 順天株によるモルモット実験白癬に対して, FK-936は平均85%の治療効果 (逆培養陰性率) を示した. これはCTZ1%単独液剤およびPY0.5%単独液剤のそれぞれの平均値76%, 61%のいずれよりも有意に優れていた.
    2. 一方, T. rubrum の新鮮分離株の中から選択したNo. 68株によるモルモット実験白癬に対しても, FK-936の平均的治療効果 (逆培養陰性率) は約90%と高く, この場合もCTZ単剤の平均69%およびPY単剤の平均60%に比べて有意に優れた効果であった.
    3. 以上のような実験白癬に対するFK-936の優れた治療効果は, PY/CTZ (1:2) 併用時のMIC値および in vitro 殺菌効果とよく対応した.
  • 福地 祐司, 蝦名 敬一, 小野 和男, 横田 勝司
    1989 年 30 巻 4 号 p. 273-279
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Aspergillus fumigatus の産生する Asp-hemolysin をリガンドとしたアフィニティークロマトグラフィーで Asp-hemolysin 親和性血漿成分を分離した. その主成分はIgGであり, 他にIgMとα2-マクログロブリンも認められた.
    Asp-hemolysin とIgGの結合様式はイオン的で, イオン強度を高くすることにより容易にアフィニティーカラムから溶出した. また, 結合部位は, ペプシン分解フラグメントを用いたアフィニティークロマトグラフィーおよびELISA法よりFab'領域と認められた. 一方, Asp-hemolysin はすべてのIgGサブクラスと結合し, サブクラス間で結合に対する相違は認められなかった.
    また, 本毒素の溶血活性に対してIgGおよびそのフラグメントでは影響は認められなかったが, α2-マクログロブリンでは Asp-hemolysin 単独に比べ若干の阻害がみられ, 本毒素の溶血機構にプロテアーゼの介在が示唆された.
  • 多部田 弘士, 河野 典博, 亀井 克彦, 山口 哲生, 長尾 啓一, 栗山 喬之, 横山 耕治, 加治 晴夫, 宮治 誠
    1989 年 30 巻 4 号 p. 280-287
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Nitroblue tetrazolium (NBT) 還元試験を応用し, ヒト多形核白血球 (polymorphonuclear leukocyte, PMN) の Candida albicans (C. albicans) に対する食菌能及び食菌に伴う superoxide (O-2) 産生能を同時に測定できる実験系の作製を試みた. 測定条件の検討の結果, NBT溶液 (2mg/ml) に懸濁した Candida 液(2.5×107/ml) とPMN液 (2.5×106/ml) 0.2mlずつに50%被検者血清0.1mlを加え, 30分間培養した後, 食菌率 (NBT-食菌率) 及びNBT還元率を測定した場合が最適と考えられた. また, 上記と同様の条件下でNBTを加えない実験系を作製し, 食菌率 (PBS-食菌率) 及び被食菌 Candida を逆培養して求めた殺菌率を測定した. 健常成人のPMNでは, NBT-食菌率とPBS-食菌率とは正の相関を示し, また, 強いNBT還元能と殺菌率とは正の相関を示した. 従って, NBT添加が食菌能測定の妨げとはならず, 本測定法により食菌能測定と同時に食菌に伴うO-2産生能を測定できると考えられた. 本測定法を用い, 各種呼吸器疾患患者におけるPMN機能を検討した結果, 一部に殺菌能の低下している症例が認められ, その原因の一つとしてO-2産生能の低下が関与している可能性が考えられた. 以上の結果より, 本実験系はヒトPMN機能の検討に有用であると考えられた.
  • 依藤 時子, 庄司 昭伸, 中川 浩一, 濱田 稔夫, 巽 陽一, 橋本 孝二, 戸矢崎 紀紘, 宇田川 俊一
    1989 年 30 巻 4 号 p. 288-296
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    急性骨髄性白血病患者に発症した原発性皮膚ムーコル症について報告した. 症例: 56歳, 女性. 急性骨髄性白血病の治療中, 左前腕の留置静脈針の固定絆創膏下に中心部黒色を呈する小丘疹が出現し, 急速に拡大して, 5日後には直径5cm, 暗紫色で皮膚面よりやや隆起した中心壊死性の病変となった. この部より白色綿毛状集落を分離した. 病理組織学的所見では真皮全層から表皮の一部に隔壁のない幅広の菌糸を認め, 菌糸は血管壁を貫通し, 血管を塞栓している像も見られた. Amphotericin B の点滴静注で皮疹はやや軽快したが, 皮疹出現よりわずか17日で死亡した. 分離菌は Rhizopus microsporus var. rhizopodiformis と同定された. 本菌はわが国における未紀録種で, 海外でも本菌によると同定された症例は12例に過ぎない.
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