真菌と真菌症
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酵母 Hansenula mrakii の産生するキラートキシンを用いた Candida albicansCandida glabrata の判別培地の作製および, それの産婦人科領域への応用
山本 哲郎宮崎 敬之柳生 淳二岩瀬 一片桐 信之穂垣 正暢内田 勝久竹重 厚子野原 久美子山口 英世
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1988 年 29 巻 4 号 p. 257-264

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抄録

酵母 Hansenula mrakii IFO 0895株の産生するキラートキシンは, 51株の Candida glabrata を10μg/ml以下で完全に阻止した. 一方, 74株の Candida albicans に対しては, 100μg/ml以上の最小発育阻止濃度 (MIC) を示した. また, Candida krusei に対するMICは5μg/mlであったが, Candida tropicalis および Candida parapsilosis は100μg/mlでも阻止されなかった.
このキラートキシンの選択毒性を利用して, 外陰・膣真菌症の二大原因菌である C. albicansC. glabrata の分離と鑑別を簡便に行う培地の開発を検討した. すなわち, 真菌のみを選択的に分離する目的で, YEPD培地に抗細菌性抗生物質のメズロシリンおよびシソマイシンをそれぞれ100μg/mlおよび50μg/ml, さらに亜テルル酸カリウムを20μg/ml添加した培地 (MS培地) を作製したところ, MS培地は真菌の発育にはほとんど影響を与えず, 細菌の発育のみを特異的に阻害した. 次に, 膣真菌症の主要な病原菌である C. albicansC. glabrata をキラートキシンの感受性の違いにより判別するために, 90mm径のシャーレを2分し, 一方がMS培地, 他方がMS培地に15μg/mlのキラートキシンを添加した簡易判別培地 (KMS培地) を作製し, 膣より真菌の分離, 同定を行ったところ, C. albicansC. glabrata の2菌種のみが検出された. しかも, 両菌種は簡易判別培地上で明瞭に判別でき, 同定結果とも一致した. また, C. albicansC. glabrata の単独感染率は75例中, それぞれ50例 (67%) および20例 (27%) であった. さらに, C. albicans の血清AとB,または, C. albicansC. glabrata の複合感染もそれぞれ1例および4例みられた.

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© 日本医真菌学会
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