抄録
Flask culture methodの有用性を大和病院皮膚科外来で白癬患者の病巣から得られた材料の培養を行って検討した.のべ培養件数156に対してTrichophyton rubrumは55株,はT.rubrumの疑いは4株,T.mentagrophytesは40株,Epidermophyton floccosumは2株分離培養された.同定不能の皮膚糸状菌は29株,汚染糸状菌は11株,酵母様真菌は2株培養された.培養したが真菌が発育しなかった病巣は13であった.のべ培養件数156に対する皮膚糸状菌培養率は83.3%(130/156),皮膚糸状菌同定率は62.2%(97/156),分離培養された皮膚糸状菌130株に対する菌種確定率は74.6%(97/130),T.rubrum/T.mentagrophytes比(TR/TM比)は1.38(55/40)であった.
Flask culture methodは培養中の真菌を直接,顕微鏡で観察することができるので大分生子,小分生子,ラセン体などの形成過程を観察するのにも有用であった.T.rubrumでは大分生子,小分生子,紅色色素はともに3週前後に認められ,T.mentagrophytesでは大分生子,小分生子は1~2週後に,ラセン体は約3週後に認められることが多かった.T.rubrumはT.mentagrophytesに比べて大分生子,小分生子形成が遅いと考えられる.
Flask culture methodは皮膚糸状菌の分離培養法としてだけではなく簡便な菌種同定法としてもかなり有用であると考えられる.