日本医真菌学会雑誌
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白癬菌類似の寄生形態が見られる爪カンジダ症における爪甲内菌要素の免疫組織化学的検討
渡辺 晋一高橋 久滝沢 清宏石橋 康正
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1991 年 32 巻 3 号 p. 189-195

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抄録
通常の浅在性のカンジダ症では生検を行わなくても, 直接鏡検により, その特有な寄生形態 (桑実状の分芽胞子集団と仮性菌糸) を示すことから, 直ちにカンジダ症と診断することができる.しかし, ある種の浅在性皮膚カンジダ症や深在性のカンジダ症では表在性の皮膚・粘膜カンジダ症における典型的寄生形態を示さず, 他の真菌症と鑑別が困難なことがある.以前我々は臨床像あるいは直接鏡検所見では爪自癬と区別がつかないが, 常にカンジダが培養される症例をいくつか経験し, この疾患が従来から記載されているカンジダ性爪囲・爪炎と臨床・病理学的に異なり, しかも何らかの免疫不全を背景に発症した原発性の爪カンジダ症である可能性を指摘した.しかし, 分離されたカンジダがcontaminationとして培養された可能性は完全に否定されたわけではない.そこで, 今回我々は, 抗 Canelida albicans血清を用いて, 爪甲内の真菌を免疫組織化学的に染色し, 爪甲内に存在する白癬菌類似の菌要素が白癬菌でなく, カンジダであることを証明した.またこの抗 Canelida albicans血清がカンジダに特異的であるか否かを検討するために, 白癬14例, 癲風5例, スポロトリコーシス2例, 皮膚クリプトコッカス症2例, クロモミコーシス1例, 皮膚アスペルギルス症1例, 皮膚トリコスポロン症1例から得られた病理標本も同時に染色し, この抗体がカンジダ症に特異的であることを確かめた.
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